hirokki13のノート

英語論文抄読のまとめ

痛みを伴う変形性膝関節症における超音波エコー検査の使用に関するEULARレポート パート2

EULAR report on the use of ultrasonography in painful knee osteoarthritis. Part 2: Exploring decision rules for clinical utility

 

Ann Rheum Dis 2005;64:1710–1714.

 

要約

背景

滑膜炎症(肥厚と浸出液)はOAの一般的症状であり、おそらく痛みと変形の両方に重要な因子となっています。

目的

痛みを伴う膝OA患者の滑膜炎を臨床所見と超音波エコーによって見分けることが可能かどうかを明らかにすること。

方法

登録対象はEULAR-ESCISITの横断研究で他施設研究。痛みを伴う膝OA症例の臨床的所見やX線、超音波エコーにて評価を行いました。CART解析は変化が起きる予測の組み合わせを見つけるために実施され、臨床的な滑膜炎と浸出液のデータは感度と特異率を計算しました。超音波エコー評価は2つの項目で滑膜炎と浸出液(滑膜肥厚や深度、外観の組み合わせ)で、探索的データ解析を含んでいます。

結果

600名の膝OAはこの研究に含まれました。膝滑膜炎と関節液の両方の特異率と感度は乏しく(膝滑膜炎は感度75%、特異度45% 陽性尤度比1.36。浸出液は感度71.6%、特異度43.2%で陽性尤度比1.26。)。探索性のデータ解析は特異度と感度で有意差がなかった。陽性尤度比1.26-1.57。

結論

OAで炎症の起きている母集団から臨床指標、X線所見で明らかにすることは可能であるにもかかわらず、CARTの解析にて有用な臨床決定ツールを見つけることではできなかった。したがって感覚をイメージ化させるテクニックである超音波エコーのような使用しやすいツールを進行程度や膝の滑膜炎の確定のために続ける。

 

パート1レポート含めた有用な記載

・滑膜炎を検出する際のパワードプラの感度は有用性が強く示されている

・超音波エコー検査では正常な滑膜は3mmの厚さと言われている

・関節浸出液は膝伸展位で測定 4mm以上で浸出液ありと診断

・滑膜肥厚は膝屈曲45°で実施 膝陥凹で測定

→びまん性もしくは結節状のものを測定

 

図は

EULAR report on the use of ultrasonography in painful knee osteoarthritis. Part 1: Prevalence of inflammation in osteoarthritis

Ann Rheum Dis 2005;64:1703–1709

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左:滑膜炎 右:浸出液 

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滑膜肥厚と患者比率

 

 

《感じたこと》

今回の抄読は滑膜組織の測定方法を知りたかったため実施。日本論文を調べたけど載っていない。

論文の95%以上は英語であるため、普段読んでいる日本語論文は全体の数%の中から選んでみていることを自覚しておかないといけない。

 

 

 

 

変形性膝関節症の滑膜異常に対する超音波エコーの適応 −横断研究−

Associations Between Clinical Evidence of Inflammation and Synovitis in Symptomatic Knee

 

Osteoarthritis: A Cross-Sectional Substudy.Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Sep;69(9):1340-1348.

目的

超音波によって通常の滑膜肥厚の厚さと浸出液程度を証明することと、膝痛があり、レントゲンでのOA像のある群のカットオフ値を示すこと。

方法

KPICとNottinghamKPの9506名からランダムで抽出された40歳以上の女性147名、男性152名が対象となりました。

膝痛がなく、レントゲンからOA変化のない163名の症例からパーセンタイル方法を使用して正常範囲は確立された。

最適(感度と特異性の最大)と高特異性(90%)のカットオフはROC曲線を用いて膝痛とレントゲンOA像のある群と正常群で比較され、証明された。

結果

浸出液と滑膜肥厚は性別によって異なったが、年齢もしくは左右差で違いはなく、性別特異性は推定された。しかし、正常範囲の男女の間では浸出液の程度は似ている(0-10.3mmVS0-9.8mm)が、滑膜肥厚は違いがみられた(0-6.8mmVS0-5.4mm)。健常対照群のパワードプラは同程度でなかった(1.2% 男性0.0%女性)。浸出液のカットオフ値は男性で7.4mm、女性で5.3mm、滑膜肥厚は男性で3.7mm、女性で1.6mmであった。高特異性では浸出液のカットオフ値は男性で8.9mm、女性で7.8mm、滑膜肥厚は男性5.8mm、女性で4.2mm。

結論

超音波によるカラードプラは共通ではなかったが、浸出液と滑膜肥厚は共通性を示した。しかし、痛みのあるOA症例を除いた正常群の男女間で違いがあった。OAなどに対してのカットオフ値は再評価する必要がある。

 

肥厚評価方法

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《感じたこと》

臨床でも超音波を使用しているが数ミリ単位の評価になるため、しっかりとした測定肢位や測定方法を確立しておかないとすぐに数値が変化してしまう。すごく難しい評価だけど客観的な数値が現れる分、現在の理学療法手技など客観的に評価される未来が来ると思う。

 

 

TKA術後の軽度の感染による線維症の可能性

Low-grade infections as a possible cause of arthrofibrosis after total knee arthroplasty

 

Patient Safety in Surgery volume 13, Article number: 1 (2019)

 

要約

TKA術後の軽度の関節症による線維症の可能性

 

目的

TKA術後の線維症は患者にとって大きな負担となり、医師にとっても治療上の課題となっています。1つの可能性のある原因は軽度の感染症です。この仮説はこの研究で検証する必要があります。

対象と方法

1999年1月〜2012年1月の期間でTKA術後、臨床症状のある患者19名で調査しました。レントゲン的に不正確なアライメントは対象としました。全ての患者に、創部を開いた際に臨床的()、レントゲン的、細菌学的(培養)、組織学的、生物分子学的(PCR)に調査しました。

結果

Freeman(1977)の調査と同様に、高い改善を示したのが、痛み(p=0.007)、総合スコア(p=0.003)の改善でした。膝関節の動きは統計学的に有意となりませんでした(p=0.795)。PCRは17例で陰性でした。1人の症例はコリネバクテリウムが滑膜から検出され、PCR陽性となった。培養でもブドウ球菌が検出された。検出できるほどのバクテリアの成長はなかった。2つのサンプルは評価できなかった。病理組織所見の主要なものは滑膜炎と繊維化であった。

結論

TKA術後の線維症の原因と思われた軽度の感染症の影響はこの研究で確認されなかった。しかしながらこの小さな母集団での研究の基礎は必要であり、今後、対象を大きくし、コントロール群を含めた検討が必要となる。

 

 

《感じたこと》

この論文のイントロダクションにTKA線維化の原因となる要因が記載してあり、自分の思っていることと近い内容となっていた。記載内容は炎症による組織循環障害→組織低酸素→組織線維化が起こる過程となっており、結果でも述べているが、この炎症反応は感染が考えにくい。やはり、術後理学療法の内容や動作が及ぼす侵襲部への負荷が原因となっていると思われた。

ちなみに翻訳に関して半年間行ってきて、なかなか上達が感じられなかったので3月から論文翻訳に限らず本格的に英語の勉強を始めた。(リーディングやスピーキング)

なぜか翻訳が少し早くなった気がする。今後、英語学習を重点的に置きながら論文抄読を研究に必要な論文のみ抽出して訳していこうと思う。今まで1週間に1〜2論文と決めていたけど、手段が目的化しないように大きな目的は論文がスラスラ訳せる事なので、一度間を置きながらしてみよう。

 

TKA術後の大腿四頭筋とハムストリングスの筋力推移 ―メタアナリシスー

Serial Changes of Quadriceps and Hamstring Muscle Strength Following Total Knee Arthroplasty: A Meta-Analysis

 

 

Moon YW, Kim HJ, Ahn HS, Lee DH:Serial changes of quadriceps and hamstring muscle strength following total knee arthroplasty:A meta- analysis. PLoS One 2016:11

 

要約

このメタアナリシスは術前からTKA術後1年間の大腿四頭筋ハムストリングスを含む大腿筋群 の連続的な変化の分析をすることを行った。TKA側と対側の健常側で大腿四頭筋ハムストリングスの等速性収縮筋力の比較を行う研究がこのメタアナリシスに含まれた。

このメタアナリシスに5つの研究と7つのコホートが含まれた。

 TKA側と対側の大腿四頭筋ハムストリングスの筋力の平均値の差は術後3ヶ月で最も大きかった(大腿四頭筋26.8N∙m, ハムストリングス12.8N∙m, P<0.001),しかし、術後6ヶ月で術前の数値と近くなり(18.4N∙m, 7.4N∙m P<0.001)、1年間改善がみられた(15.9N∙m,4.1N∙m P<0.001)。大腿四頭筋ハムストリングスの変化は術前と比較して9.2Nと4.9Nで、それぞれ術後3ヶ月後と比べ有意差があった(P=0.041)が、6ヶ月後と1年後では大きな違いが認められなかった。術後、1年間の期間内で3ヶ月が一番筋力が低く、術前のレベルになるには6ヶ月要したが、対側の筋力までは到達しなかった。術前と比較してTKAと対側との違いは3ヶ月後のみであった。なぜなら術後3ヶ月後の大腿四頭筋の筋力低下はハムストリングスの筋力低下より有意に大きかった、TKAの早期リハビリテーション大腿四頭筋の筋力に焦点を当てなければならない。

 

《感じたこと》

TKA術後の筋力推移は6ヶ月目で術前と同レベルになるということであったが、自分の病院で調査していると半数程度は1ヶ月目には術前筋力を超えている症例がいる。ここで、術前と比べて術後に改善する症例の傾向など細かく調べる必要がありそう。そうなれば術前リハビリや術前評価は必須になってくると思う。痛みに関しては鵞足部痛なのか滑膜の痛みなのか、半月板の痛みなのかによって、筋出力に違いは出ると思われる。

 

TKA症例のアウトカム指標の改善によって活動行為の客観的指標の改善は相関しない

Improvements in Objectively Measured Activity Behaviors Do Not Correlate With Improvements in Patient-Reported Outcome Measures Following Total Knee Arthroplasty

 

The Journal of Arthroplasty

Volume 35, Issue 3, March 2020, Pages 712-719.e4

 

要約

背景

活動を監視することは私たちの能力、TKA術後の患者の客観的な身体活動量の新しい側面を加えた。この研究目的は座位、立位、足踏みに費やす時間がTKA術前後のPROMs(患者報告アウトカム評価)と関連するかどうか評価することです。

方法

49名の男性と女性(62.8±8.6歳、BMI33.8±7.1kg/mm2)の初回TKA症例で術前と6週間もしくは6ヶ月後にactivPAL(3日以上)のデータとPROMsは取得した。患者記録の症状は痛み、柔軟性、膝機能を膝損傷と変形性膝関節症のアウトカムスコア(Knee injury and Osteoarthritis Outcome Score:KOOS)とオックスフォード膝スコア質問表(Oxford Knee Score questionnaires:OKS)によって得られた。

結果

KOOS(80.1±16.3→41.6±6.5 P<0.001)とOKS(12.0±9.8→17.7±22.8 P<0.001)の平均値は術後6ヶ月後で改善しました。歩行時間は術前から6ヶ月後には増加が認められました。(平均値[95%信頼区間]min/day) (79[67-91]分/日)→(101[88-114]分/日 P=0.006)

立位時間と座位時間は術前と6ヶ月後で変化がありませんでした。立位((318 [276-360] →321 [291-352], P = 0.782)。座位(545 [491-599] →509.0 [459.7-558.3], P = 0.285)。参加者の歩数(2559 [2128-2991] →3515 [2983-4048] steps/day, P = .001) と歩数時間(31 [30-34] to 34 [33-35] steps/min, P < .001)は術前と比べより多くなっていました。PROMsの中の活動行為と変化の間で関連は認められませんでした(P>0.05)

結論

自己申告による膝の痛みや機能の改善が認められたにも関わらず、これらの変化は座位活動の客観的指標の上昇には至らなかった。

 

《感じたこと》

痛みが原因で活動量が低下する→痛みが減ると確かに歩行時間は増えるが、座位の時間は増えなかったとする報告。いろいろなことに当てはまることで、動かない理由を探している可能性も考えられる。活動量にはactivPALを使用しており、信頼性のあるデータと思われる。歩行は増えているが立位、座位が増えておらず、純粋に膝機能をよくするだけでは活動量に結びつかない可能性がある。心理的な行動変容へのアプローチが必要になるのかな。。ナッジとか?

 

 

※activPAL:ヒトの活動状況(座位・立位・歩行)を長期間,連続的に測定できる身体活動量計(傾斜計)である。特にSBを精度良く測定できる機器として国際的に知られている。

※KOOS:症状、こわばり、痛み、日常生活、スポーツおよびレクリエーション活動、生活の質といった尺度。

 

オランダ人の関節形成術のデータを利用したTKA術後の痛みと機能的なアウトカムの術前予測モデルの開発

Development of Preoperative Prediction Models for Pain and Functional Outcome After Total Knee Arthroplasty Using The Dutch Arthroplasty Register Data

 

The Journal of Arthroplasty

Volume 35, Issue 3, March 2020, Pages 690-698.e2

 

要約

背景

TKA術後の治療満足度の主要な決定因子の1つに術前の予測の完了があります。最適な予測管理のために、治療結果を正確に予測することが有用です。オランダ人の関節形成の登録(LROI) されている複数の患者因子は治療結果の予測を立てるためによく利用することができるかもしれない。本研究の目的は変形性膝関節症のTKA術後患者の残存する症状の予測を作成することと検証することです。

方法

データは手術前と手術にPROMS(患者報告アウトカム評価)を登録したTKA患者全てをLROIから抽出しました。満足度と治療成績、安静時や動作時の痛み、立ち座り動作、階段昇降、歩行、ADL、膝立て、スクワットの残存症状を予測アルゴリズムに構成して多変量ロジスティック回帰分析を行いました。私たちは鑑別と検定の測定を検査する予測の性能を評価しました。

結果

7071名の患者データがデータ解析されました。スクワット(男性59%女性72%)と膝立て(男性56%女性71%)時の残存した症状は最も頻繁で、最も頻度の少ない症状は歩行時(男性12%女性16%)、安静時の痛み(男性14%女性18%)と報告されました。この予測アルゴリズムは臨床統計者によって個々の患者の残存した症状の確率を発表したことを提示されました。立ち座り、階段昇降、歩行、ADL、治療成果に関する残存した症状のモデルは判別できる評価を明らかにしました。(ROC曲線下面積0.68-0.74)。その膝立てやスクワット、痛み、満足度の残存した症状によるアルゴリズムは明らかにしました。あまり良くない結果を明らかにしました。(ROC曲線下面積0.58-0.64)。その較正曲線はモデルの中で最も適切な検定として明らかにした。

結論

患者のかなり多くの比率でTKA術後の残存した症状を持っていました。本研究は人口統計と患者評価アウトカムのデータを集め、LROIの中で術後の残存症状の確率を予測することができたことを明らかにしました。そのモデルは治療の成功、機能的アウトカム、疼痛軽減に関して個々の患者で特異的な10項目の残存している症状の確率を予測することを開発しました。この予測はTKA患者の個別的な管理を予測することに使用することができます。

 

《感じたこと》

多くの症例で負荷のかかる動作に関しては痛みや症状は残存しているが歩行や安静時など負荷のない動作に関しては残存していなかったということができそう。

 

 

TKA術後のリハビリテーション:人種の違いはあるのか?

Rehabilitation After Total Knee Arthroplasty: Do Racial Disparities Exist?

 

The Journal of Arthroplasty

Volume 35, Issue 3, March 2020, Pages 683-689

要約

背景

TKA術後の機能的なアウトカムの人種による違いは存在します。これらの違いがリハビリテーションの実施に寄与するかどうかの調査はされていません。

方法

2006年から2013年の間でTKAを行った女性の健康を主導している前向きコホート研究で8349例の登録があり、リハビリテーションの利用はメディケア(米国版医療保険)のデータを通じて決定された。

術後の退院先(家、ナーシングホーム、リハビリテーション施設)、施設滞在期間、訪問理学療法の数、外来理学療法の数を人種のグループ間で比較しました。

結果

ラテンアメリカ系でない黒人女性は身体機能(median score, 65 vs 70)と、より高い能力障害(13.2% vs 6.9%)の可能性が術前のラテンアメリカ系でない白人女性と比べ悪かった。TKA術後、黒人女性は白人女性より退院の可能性が高く(64.3% vs 54.5%),訪問理学療法を受ける可能性が高く(52.6% vs 47.8%),訪問理学療法と外来での理学療法の数が多かった。術後の退院状況による階層別では、訪問理学療法と外来理学療法は人種間で差がなかった。訪問理学療法もしくは外来理学療法の診療報酬に有意差がなかったことは健康や医学の特徴的な理学療法の必要性の重症度の傾向スコアの根拠となった。

結論

リハビリテーションの利用はTKAを受ける白人、黒人の間で一般的に同等であった。術後リハビリテーションサービスの未活用によるエビデンスがなく、リハビリテーションの診療報酬の不公平性の結果がTKA術後の身体機能的アウトカムの違いにならなかった。

 

 

《感想》

なかなか論文抄読を続けても読める気が全くしない。やり方が間違えているのかな。一度方法について勉強し直してみよう。