hirokki13のノート

英語論文抄読のまとめ

変形性膝関節症症例の滑液VEGF(血管内皮増殖因子)とレプチンの間の超音波所見の関係性

The relationship between synovial fluid VEGF and serum leptin with ultrasonographic findings in knee osteoarthritis

 

First published: 20 December 2014

 

目的

この研究の目的は変形性膝関節症の放射線検査や超音波検査所見と一致する滑液と血清マーカーを決定することでした。

方法

臨床検査による関節液から検出した変形性膝関節症例34名が対象となりました。両膝関節を単純X線写真と超音波検査を用いて調査しました。WOMAC、VAS、HAQ(Health Assessment Questionnaire) を用いて質問を得ました。滑液と血管内皮増殖因子(VEGF)、細胞外基質分解酵素(MMP-13)、レプチン、レジスチンおよび軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)の血清レベルは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して測定されました。

結果

滑液のVEGFレベルはKL分類と正の相関を示すもので、KL分類4の患者はKL分類2の患者より高いものでした。滑液のVEGFは内側骨棘の長さなどの超音波検査所見と相関していました。浸出液の含有量は滑液レジスチンと正の相関を示していました。レプチンの血清レベルはHAQと内側骨棘の長さで正の相関がみられました。MMP-13とCOMPのレベルは超音波検査と単純X線写真の検査と相関しませんでした。

結論

滑液のVEGFレベルは超音波検査の所見とレントゲン所見の分類と機能状態とに相関がみられ、血清レプチンレベルも変形性膝関節症の超音波検査所見および機能状態と相関した。

 

健常人の超音波検査による滑膜炎症所見の有病率

Prevalence of ultrasound synovial inflammatory findings in healthy subjects

Annals of the Rheumatic Diseases Volume 75, Issue 10 2016

 

目的

超音波検査のグレースケール法(通常画像で低エコーや高エコーなどで判断する方法)とドプラーの使用によって健常人の足、手関節などの小さな関節の炎症異常と骨びらんを検出し有病率を評価すること。

方法

関節症状を除いた207人の健常人の32関節(10中手節関節、10近位指節間関節、10中足節関節、2手関節)の背側表面の超音波検査を行いました。滑膜浸出液、滑膜肥厚、パワードプラーの信号を判定量的(しっかりとした数値まで示せないこと。低、中、高や1-5など。ここでは1〜3段階)なグレードスケールを用いて点数化したことと骨びらんの程度の2成分を評価しました。

結果

182例の対象が少なくとも1つの超音波検査の異常値が出ました。52%は滑膜浸出液のみ、13%は滑膜肥厚のみ(パワードプラーありで5%、なしで8%)、滑膜浸出液と滑膜肥厚の両方は35%でした。超音波検査の所見は全関節の9%で検知し、大部分は足で特に中足指節関節(陽性関節の33%)でした。滑膜浸出液は最も頻繁に検出され(陽性関節の68%)、滑膜肥厚は次に続きました(31%)。重症度は滑膜浸出液、滑膜肥厚、ドプラー所見のいずれでもスケールで平均1と軽症なレベルでした。4例の骨びらんが検出されました。

結論

この研究は初めて健常人に対して足や手関節などの小さな関節の損傷の構造と関節炎の超音波検査兆候の有病率を調査した大規模なコホート研究です。超音波検査での異常値の大部分は足関節に共通していました。超音波検査は炎症性関節炎によって影響を及ぼしている関節が病態的なのか生理的な知見なのかの両方を判別することが評価できるかもしれないことを明らかにすることを更なる研究で求められています。

 

《感じたこと》

日本の論文ではほとんどみられない超音波検査を用いた滑膜肥厚や炎症症状の反応が調査されている。臨床では運動器疾患(炎症性疾患)は心疾患や呼吸器疾患のように客観的な評価が不足しており、超音波検査はこれを補っている。2016年に発表された論文であり、今後運動器疾患の評価には世界的な基準となってくることが予想される。

 

膝滑膜炎:超音波検査は滑膜組織検査と強く相関する

Knee Synovitis: Ultrasonographic Findings Strongly Correlate with Synovial Membrane Histology

 

BMJ Journals Annals of the Rheumatic Diseases  June 2016 - Volume 75 - Suppl 2

 

背景

関節鏡検査は滑膜を直接可視化することによって膝の滑膜炎を評価するゴールドスタンダードな検査となっている。それは侵襲を与えている事実があり、他の信頼できる滑膜炎の評価法の確立は過去数年にわたって開発されました。超音波検査は早く、低コストで利用しやすい画像処理手段で、滑膜炎の検出ができることを確認した(1)。超音波検査と関節鏡検査の知見は相関がみられた(2)。しかし、組織学的所見と超音波検査の間に相関があるかはまだほとんど報告されていません。

目的

この研究の目的は膝滑膜炎の炎症初見と血管分布を超音波検査のスコアと関節鏡検査のスコアと組織学的検査のスコアの間で相関があるのかを評価しました。

方法

膝の痛み、浸出液を伴う患者が前向き研究として選ばれた。膝は3つの区画に分けた。(内側、外側、中間)。膝超音波検査(Bモード、とドプラーモード)の実施者は1人で行い、関節鏡検査前に滑膜炎の程度を半定量的(しっかりとした数値まで示せないこと。低、中、高や1-5など。)に評価しました。膝関節鏡検査は1人の実施者が行い、超音波検査の所見を盲検化し100mmのVASでスコア化、それぞれの区画から生検を取得しました。細胞診は1人の実施者によって関節鏡検査、超音波検査の所見を盲検化し分析され、肥厚層、炎症、血管分布についてスコア化した。統計解析はノンパラメトリックのスピアマン相関検定を用いました。

結果

対象者は23名の患者となりました。16名が関節リウマチでした。3名は乾癬性関節炎。3名はOA、1人は痛風でした。超音波検査、関節鏡検査、組織学的検査による血管分布と滑膜炎の両方のスコア平均はそれぞれの患者で計算しました。それぞれ強い相関が認められ、超音波検査の滑膜炎スコアと組織学的検査による炎症スコアの間(r=0.71; p=0.001)。超音波検査のドプラー評価と組織学的検査の血管分布スコアの間 (r=0.6; p=0,0003)。超音波検査での滑膜肥厚測定と内層の過形成の測定の間(r=0.61; p=0,002)。さらに組織学的検査による滑膜層の過形成と炎症反応の間に高い正の相関が認められ、それぞれに内側と外側の区画(r=0,90; p=0,00005 and r=0,66; p=0,014 )。外側と中間の区画(r=0,75; p=0,001 and r=0,51; p=0,048)。内側と中間区画(r=0,61; p=0,012 and r=0,62; p=0,010)となりました。

結論

活動性の炎症のある膝に対して超音波検査のBモードとパワードプラーは組織学的検査による炎症所見と血管分布のスコアとの強い相関が認められました。 リウマチに最もよくみられる4つの共通した疾患(関節リウマチ、乾癬性関節炎、OA、痛風)に対して超音波検査は膝関節の評価において信頼のできるツールであり、さらに膝の内側、外側、中間区画において組織学的な炎症所見と滑膜層の過形成は強く相関し、同じ関節内の滑膜の特徴の均一性がありました。

 

《感じたこと》

炎症反応が起きているところは滑膜の過形成(肥厚)と血管分布が起きており、非侵襲的な超音波エコー検査で評価ができることを証明しているものだった。関節可動域制限の評価に超音波エコー検査は有用で、今後、理学療法士の世界にも普及することは間違いないと感じた。

 

 

思春期のMPFLを中心とした痛みに対する関節鏡での外側支帯のリリース 

Arthroscopic Lateral Retinacular Release in Adolescents With Medial Patellofemoral Ligament-centered Knee Pain

Blackman, Andrew J. MD; Smith, June C. MPH; Luhmann, Scott J. MD

 

Journal of Pediatric Orthopaedics: April/May 2016 - Volume 36 - Issue 3 - p 268–273

 

背景

MPFLは一般的に思春期の膝前部痛原因因子として関係するとされている。この研究の目的は MPFLを中心とした難治性の痛みに対してのALRR(関節鏡による外側支帯のリリース)の臨床成績を報告し、手術の不成功因子、予後不良因子を明らかにすること。

方法

ALRRを受けた全ての患者を特定するために1人の外科医のデータベースを参考にした。膝蓋骨の不安定性もしくは一般的な膝の前部痛ではなくMPFLの痛みに対してALRRを行った症例で最低12ヶ月間の追跡期間を基準とした。全ての症例で手術前に保存的治療を行ったにも関わらず慢性的なMPFLを中心とした痛みを持っていた。最初の結果としてIKDC(膝評価用紙)による主観的スコアと更なる手術の必要性、一般的な脛骨の骨切りが含まれていた。

結果

71人の88膝(女性66名、男性5名:平均年齢15.7歳(8.4-20.2歳))となった。平均的なフォローアップ期間は59ヶ月間(12-138ヶ月)。手術前平均IKDCスコアは41.9(18.4-67.8)。一方で手術後のIKDCスコアは77.8(11.5-98.9:P<0.01)となった。術後IKDCスコアは悪かった。Sulcus angleが134°以下は134°以上よりも手術後のIKDCスコアが悪かった。(69.9±22.1vs82.0±12.5 P=0.04)。術前IKDCが低い症例は手術後のIKDC改善に負の相関を示した(r=−0.40, P<0.05)。17膝(19.3%)で持続した症状の結果、骨切り術を行った。最終的に骨切り術を必要とした症例は必要のない症例よりも若く(14.8±1.5vs15.9±2.1 P=0.04)、術前の平均Blackburne-Peel ratio比が低かった。(0.95±0.25 vs. 1.11±0.24; P=0.02)

結論

この研究で難治性のMPFLを中心とした痛みに対してALRRを行った症例の臨床成績は有意な改善を示したことを平均5年間のフォローアップによって証明した。転機不良や手術の効果がなかった症例は手術前のIKDCが低かったり、若い症例であったり、術前Blackburne-Peel ratioが低く、sulcus angleが134°以下であった。結果は前向きに記録されなかったが術後60ヶ月未満のIKDCスコアの平均は60ヶ月以上のスコアと変わりなかった。

 

関節線維症を起こしたTKA症例の術中屈曲の膝蓋骨厚と膝蓋骨の動きの影響

The Effect of Patellar Thickness on Intraoperative Knee Flexion and Patellar Tracking in Patients With Arthrofibrosis Undergoing Total Knee Arthroplasty

 

The Journal of Arthroplasty

Volume 31, Issue 5, May 2016, Pages 1011-1015

 

背景

 TKA手術前に関節線維症を起こしている症例と術前屈曲角度が正常な症例に対して他動的な屈曲時の膝蓋骨厚と膝蓋骨の動きに対し私たちは術中の影響を評価した。

方法

一般的な後十字靭帯温存のTKA 34例を行い、23例は正常可動域、11例は線維症症例で麻酔下で他動的膝屈曲角度が100°以下の症例とした。臨床的なバランスと膝蓋骨の動き一致させ、通常のものより2mm(2-8mm)より厚く設置し、治験を行った。他動的な膝屈曲角度はデジタル写真を用いてゴニオメーターで記録した。膝蓋骨の動きは視覚的に評価を行った。

結果

膝蓋骨の厚さを2mm厚くするごとに平均で屈曲角度が2°減少した。(P<0.0001)手術前の屈曲角度が正常な症例も同様の結果を示した。加えて膝蓋骨を厚くすることで正常な関節症例も線維症症例も同様に膝蓋骨は傾きや亜脱臼が認められなかった。

結論

膝蓋骨の厚さは線維症のあるTKA症例の中で膝蓋骨の動きに影響を示さず術中の他動屈曲に中程度の影響も示した。正常関節症例と線維症症例の間で膝蓋骨の動きや術中屈曲の著名な違いはなかった。

《感じたこと》

膝蓋骨を厚くすることでの膝屈曲角度は減少が認められたということは、膝蓋骨の周囲の組織がtightになることで制限が生まれると解釈してもいいのかな。その解釈で行うと膝蓋骨を厚くしなくても膝蓋骨周囲の組織が肥厚や柔軟性が低下することで周囲組織はtightとなり制限が起きるのではないかと思った。

 

膝蓋大腿関節痛症例の内側・外側支帯の厚さ:症例対照研究

Medial and Lateral Patellofemoral Joint Retinaculum Thickness in People With Patellofemoral Pain: A Case‐Control Study

 

 Journal of Ultrasound in MedicineVolume 38, Issue 6

 Simon Lack PhD  Luke Anthony iBSc  James Noake MD  Kay Brennan MD  Bairu Zhang PhD Dylan Morrissey PhD

 

First published: 24 September 2018

 

目的

膝蓋大腿関節痛の有無の両方で超音波エコーを使用して、外側・内側支帯の厚さを測定し、症状の期間や機能との関連を評価する。

方法

32膝(膝蓋大腿関節痛の症状のある16膝と無症状の16膝)の内側・外側膝蓋大腿関節の支帯の厚さを超音波のBモードで膝蓋骨辺縁0.5cm 1.0cm 1.5cmを測定した。膝蓋大腿関節痛を有している方はKujalaスケールを行い、両グループで片脚スクワットの評価を行った。双方向性の分散分析で全体的な傾向を判定し、それぞれの測定値の差や大きさをコーエンdで効果量を算出した。

結果

2つのグループで年齢、身長、体重は一致した。コントロール群との比較では膝蓋大腿関節痛を有している方で外側(P=0.03)・内側支帯(P<0.01)は厚い傾向にあった。支帯の厚さとKujalaスケール、症状を有している期間、片脚スクワットの間に相関は認められなかった。

Kujalaスケール−支帯の厚さ

外側:r = 0.106 [0.5 cm], –0.093 [1 cm], and –0.207 [1.5 cm]

内側:r = 0.059, 0.109, –0.219

症状を有している期間−支帯の厚さ

外側:r = 0.001, –0.041, 0.302

内側:r = –0.027, –0.358, –0.346

片脚スクワット−支帯の厚さ

外側:r = 0.051, 0.114, 0.046

内側:r = –0.119, –0.292, 0.011

結論

コントロール群と比較した膝蓋大腿関節痛を有している症例の外側・内側支帯の厚さの増加は、膝蓋大腿関節痛の原因に関連する可能性のある構造変化を示した。

支帯の厚さと症状期間、または機能の間に統計学的に有意な相関関係はなかった。膝蓋大腿関節痛のある症例の構造と機能の間の関連性はないことが示された。

 

KUJALAスケール

1足を引きずる 2補助 3歩行距離 4階段 5スクワット 6ランニング 7ジャンプ 8膝屈曲の痛み 9痛み 10腫脹 11有痛性の異常な膝蓋骨の動き 12大腿部の萎縮 13屈曲制限の総合評価

《感じたこと》

関節痛を有している方は肥厚を起こしているとのデータは間違いなさそう。

今回の研究では部分的な支帯という部分的なところと比べて質問紙表や多関節関連のスクワットと大きな括りとなっているところが気になった。大腿四頭筋筋力や純粋な屈曲可動域、屈曲時の膝蓋骨移動距離など細かな機能との比較においての研究もみてみたいと感じた。支帯が肥厚するのか、支帯の下にある疎性結合組織の滑膜が肥厚しているのか気になった。

 

10名の膝蓋大腿部痛症候群と健常者を比較した外側支帯の超音波画像の特徴

Ultrasound characteristics of the lateral retinaculum in 10 patients with patellofemoral pain syndrome compared to healthy controls.

 

J Bodyw Mov Ther. 2013 Oct;17(4):523-9.

 

外側支帯の組織学的な変化は膝蓋大腿部痛症候群の患者で述べられている。膝蓋大腿部痛症候群患者の超音波検査による外側支帯の変化による情報はありません。

目的

健常者と膝蓋大腿部痛症候群患者の超音波所見とドプラー所見について述べます。

方法

10名の片側膝蓋大腿部痛症候群患者と10名の健常者の両膝の外側支帯の超音波画像とドプラー検査を実施しました。外側支帯の厚さはあらかじめ定義した3つの測定部位で行いました。加えて、欠陥申請を評価しました。

結果

両膝の外側支帯の厚さは症状のある側(3カ所の平均は4.0(1.4)mm,95%CI:1.2-6.8)と無症状側(3.7(0.8)mm,95%CI:2.1-5.3)で増大傾向にありましたが、コントロール群(3.0(0.1)mm,95%CI:2.8-3.2)と比較して統計学的有意さはありませんでした。

外側支帯のドプラー陽性信号は4名いたがコントロール群ではいなかった。(4/10vs0/10)

結論

これらの示す結果は膝蓋大腿部痛患者でドプラー検査と超音波検査によって血管新生が明らかで外側支帯の厚さが大きい傾向を示した。患者の症状側と無症状側の両側で超音波検査上、外側支帯が厚くなっており、膝蓋大腿部痛症候群の一側性より両側性という概念を支持した結果となりました。さらに膝蓋大腿部痛症候群の原因、治療のためのターゲットとなる外側支帯の役割を解明する 調査が必要です。

 

《感じたこと》

慢性的な膝蓋大腿部痛症候群では組織肥厚や慢性的な炎症が持続して起きていることが推測される。組織肥厚がやはり病態には重要なものと思われるが日本の文献は報告が少なく、英語論文抄読の必要性を改めて感じた。客観的指標となる超音波エコーは有用だと思う。自分も臨床研究の途中であるが評価方法が似ておりとても勉強になった。