hirokki13のノート

英語論文抄読のまとめ

健常人の超音波検査による滑膜炎症所見の有病率

Prevalence of ultrasound synovial inflammatory findings in healthy subjects

Annals of the Rheumatic Diseases Volume 75, Issue 10 2016

 

目的

超音波検査のグレースケール法(通常画像で低エコーや高エコーなどで判断する方法)とドプラーの使用によって健常人の足、手関節などの小さな関節の炎症異常と骨びらんを検出し有病率を評価すること。

方法

関節症状を除いた207人の健常人の32関節(10中手節関節、10近位指節間関節、10中足節関節、2手関節)の背側表面の超音波検査を行いました。滑膜浸出液、滑膜肥厚、パワードプラーの信号を判定量的(しっかりとした数値まで示せないこと。低、中、高や1-5など。ここでは1〜3段階)なグレードスケールを用いて点数化したことと骨びらんの程度の2成分を評価しました。

結果

182例の対象が少なくとも1つの超音波検査の異常値が出ました。52%は滑膜浸出液のみ、13%は滑膜肥厚のみ(パワードプラーありで5%、なしで8%)、滑膜浸出液と滑膜肥厚の両方は35%でした。超音波検査の所見は全関節の9%で検知し、大部分は足で特に中足指節関節(陽性関節の33%)でした。滑膜浸出液は最も頻繁に検出され(陽性関節の68%)、滑膜肥厚は次に続きました(31%)。重症度は滑膜浸出液、滑膜肥厚、ドプラー所見のいずれでもスケールで平均1と軽症なレベルでした。4例の骨びらんが検出されました。

結論

この研究は初めて健常人に対して足や手関節などの小さな関節の損傷の構造と関節炎の超音波検査兆候の有病率を調査した大規模なコホート研究です。超音波検査での異常値の大部分は足関節に共通していました。超音波検査は炎症性関節炎によって影響を及ぼしている関節が病態的なのか生理的な知見なのかの両方を判別することが評価できるかもしれないことを明らかにすることを更なる研究で求められています。

 

《感じたこと》

日本の論文ではほとんどみられない超音波検査を用いた滑膜肥厚や炎症症状の反応が調査されている。臨床では運動器疾患(炎症性疾患)は心疾患や呼吸器疾患のように客観的な評価が不足しており、超音波検査はこれを補っている。2016年に発表された論文であり、今後運動器疾患の評価には世界的な基準となってくることが予想される。